MDT耐震化記録:耐震改修の先達

 耐震改修したマンションを見てみたい・・・と、切実に思っていた。

 公営住宅や学校などの例はどこにでもある。いずれもバルコニーや窓に「×:バッテン」や「/:斜材」が設けられ、耐震効果は優れているのだろうけれど、分譲マンションでは「あり得ない」。見てみたいのは、住まいとしてマンションとして、少なくとも「フツーに見える」できれば「カッコイィ」「住みたい」マンション。

 そもそも耐震補強して「こんなトコ誰が住みたいねん!」ってなったら、それは違う。「地震がきても安全やねんから、しゃぁないやん!」ってフツーに思える人はとてもとても少ない。公営住宅だと、住まい手にとっては「借家」だから、大家さん(行政)の意向には逆らえない。行政としても投資効率を考えて、バッテン補強を選定する。
 それ以外に方策が無いのであれば、建替えるよりは負担が少ないから・・・と諦めがつくのだろうけど・・・。それでもそのバッテンをプラスイメージにできないものか・・・と、考えてしまう。
 
 建築雑誌やNETで思いっきり探して、神戸の山手と神奈川県の例が見つかった。
 このうち神戸の例は、傾斜地であるゆえか全貌が見える写真が見当たらない。神奈川の例は、マンションの前が広く全貌が見える。しかししかし悲しぃかな写真では、やはり伝わるべきものが伝わってこない。そこで、関東在住の友人に見に行ってくれるよう依頼した。彼は私と同じ「意匠系」だから、「注目するところ」も「?」も、ある程度共有できる。
 
 そして得られた情報。結論としては「いぃんじゃないですか」。私としては、見たい・見たい・是非とも見たい。・・・この願望は、ずぅっと後に叶う事になる。

MDT耐震化記録:理事会と管理会社とAgorasと

MDTの維持管理について、理事会有志にAgorasと管理会社を加えた協議があった。管理会社側は、新任のフロントと、会社から来た建築工事と設備工事部門の各責任者。

MDTでは、既に2回の大規模修繕を行なっており、長期修繕計画では2年後あたりに3回目を予定している。だから、耐震改修工事と大規模修繕と、時期が合致する。

1回目は、今の管理会社が管理する以前で、なにも記録がない。

2回目は、ここに住まいしていた建築士が設計監理し、施工は管理会社。但しこのときには屋根防水は触っておらず、その後に、防水単独で改修している。

冒頭理事長は、「管理会社とAgorasの、それぞれの良いトコ採りをしたい」という趣旨のことを述べられた。更には「単純に経過年数のみを指標とするのではなく、部位ごとの劣化状況を前提とした長期修繕計画をお願いしたい」とも。

これを受けて管理会社が、大規模修繕の標準的な流れとコンサルの役割を説明し、「弊社がコンサルをお受けする場合には、勿論各部の劣化診断調査を行ないます」・・・と、述べた。

理事長は、将来行なう耐震化工事に管理会社をイッチョカミさせるべきじゃないかと思っておられるのかもしれない。それを知ってかどぉか、管理会社は「建築士事務所登録も建設業登録もあるので、なんでも受注できる・・・」と豪語した。でも、私たちが同席しているので、「ただし、弊社が作業員を抱えているわけではないし、機械を持っているわけでもありません」と、本音も漏らした。

理事長は、「今、Agorasさんに耐震診断をやっていただいているわけで、耐震改修も引き続きお願いすることになると思うが、耐震改修と大規模修繕との関係はどのように考えればよいの?」と疑問を呈された。

理事長と管理会社の遣り取りをしばらく聞いていたが、どうも噛み合っていない。

どうやら理事長は、耐震改修工事は耐震補強単独で行ない、その後に大規模修繕を行なうという風なイメージを持っておられるように思えたので、

●耐震改修工事は、場合に依って杭工事も伴なう大規模な建築工事です。大規模修繕工事はいわば「お化粧」の問題であり、耐震改修工事を行なうとすれば、その仕上げ工事に他なりません。つまり、耐震改修工事を行なうのであれば、大概の大規模修繕工事の内容は仕上工事としてついてくるので、大規模修繕工事という括りは、このタイミングでは馴染みません。

という趣旨のお話をした。加えて、

●以前行なった耐久性概略調査で、ひととおりの劣化診断を行なっていること

●その時の結論としては、塗膜・シール・コンクリートの中性化など喫緊の対応を要する項目は無く

●今行なっている耐震診断調査で、クラック・中性化等の劣化診断を詳細に行なったので、大規模修繕工事を前提とした劣化診断を改めて行なうことは不要である。

と、ご説明した。

そうこうするうちに、管理会社が

●Agorasさんが耐震診断を受任しておられるという状況があるのだから、引き続きコンサル業務を依頼なさったほうがよいのではないでしょうか

と述べたら、理事長が

●じゃぁ管理会社はなにもせぇへんの?!

と、噛み付くような事を仰ったので、私から、

●管理会社には、管理組合に寄り添ってもらわなければなりません

と申し上げた。半年ほど前からの懸案事項であるエレベータ騒動を引き合いに出して、

●今後、このマンションが存続する過程でいろいろな事柄と遭遇するし、各種専門家とも話し合うことになる。そのときに、管理会社には「通訳」として機能して欲しい

と、付け足してしまった。

他のマンションのフロントもそうだったように、管理会社はAgorasが「管理」を「横取り」しに来たと警戒しているのかも。何を考えているのかしらね。Agorasは管理業務に手を出そうなどとは微塵も思っていませんよ。

※確かに我が団体名称に「管理支援」という文言があるので、この誤解は多い。すみません。

尤も、多くの管理会社が変なところで口銭を取ることには嫌悪感を抱いているし、建築士事務所登録も建設業登録も有しているとはいえ、実際のところは殆ど「丸投げ」。その割には、管理会社が得る口銭は少なくない場合が多い。

勿論、MDTの管理会社はそんなに酷い会社ではない。設計事務所が設計もせずにペイバックに明け暮れるのが許せないのと同様に、もし管理会社が口銭やペイバックに奔走して管理業務をいい加減にしたら許さないけど、その懸念は無いようだ。

実際のところ、これから耐震化に向けて進むわけで、しなければならない事が山積している。あれもこれもそれも、ぜぇんぶAgorasが単独で行なうのは至難の業。区分所有者としては、昨日今日あらわれたAgorasより管理会社の方が判りやすいだろうし安心でもあるから、管理会社にはしっかりサポートしてもらいたいトコロ。

MDT耐震化記録:Con強度:速報

調査会社から、コンクリート強度の速報が来た。

各棟各階3箇所づつコア抜きしたから3箇所×5階×3棟=合計45個。そのうち設計強度を下回っているのは3箇所のみだった。簡易調査で、シュミットハンマーに依る強度推定を行なった際にGoodという感触を得てはいたが、大きく外れていなかったので、ひと安心。

この「各棟各階3箇所づつ」というコア採取基準は、耐震診断の評価を受けるための条件。現有のコンクリート強度を正しく把握しないと、耐震診断は意味をなさなくなる。採取部位の選定には少し苦労した。以前に書いたとおり狙い目は「PS」だったが、ほとんどの住戸が「物置化」していて、コア採取作業ができるPS探しが大変だった。

MDT耐震化危篤:耐震診断調査(2013年6月)

入梅はしたものの一向に雨が降らず、各地の水不足が報道されていたのに、調査開始日はドシャ降りだった。おまけに台風まで近づいているらしい。

コア抜き作業は比較的順調に進み、予定通り2日間で完了する。ひび割れ等目視調査も共用廊下等からの目視調査だから、なんとか行なえた。問題は不同沈下測定。屋上の立ち上がり天端の高さを計測するのだが、調査会社は「多少の雨だったら大丈夫ですよ」と頼もしい。

設計者という立場で専門会社が行なう調査に立ち会っても、実際の作業には加われないし、専門会社が行なっている調査に異論を挟む余地もない。だから、設計事務所が立ち会うのは、もしかしたら耐震診断に反対された区分所有者が、調査の騒音等をやり玉に挙げて苦情を申し立てた場合に、その受け皿として機能しなければならない可能性がある・・・とか・・・万一調査そのものに不安や不信を感じた居住者等に丁寧に対応する・・・というだけのはなしかも。

しかし、居住者の誰も経験したことが無いだろう「調査」。専門業者は勿論万全の態勢で臨むから、滅多な事は起きないだろうが、もし居住者のおつむに「?」が点灯したときなど、訊ける人間が欲しいのでは・・・と思う。だから、私は設計者として立ち会う。

管理会社が見学していた。実際に見学していたのはMDTの設備を担当する部署で、単純に技術的好奇心にかられたらしく、管理組合の相談窓口となるフロントは来なかった。たしかに、民間分譲マンションが耐震を真剣に検討するという例は、関東を除いて稀だから、他にやらなきゃならないことを優先したのだろうが、それにしても実際を見学すると否とでは全く違うのに・・・勿体ない・・・と思うのは、私だけだろうか。

現地調査は二日で完了した。その間、心配していたクレームは皆無だった。

【余談】

現地調査初日の朝、顔を洗おうと洗面所に立って足がすくむような思いをした。顔の右半分が真っ黒け! 急遽皮膚科を併設する内科診療所を受診したら「ヘルペス」と診断された。「疲労が溜まってるんじゃない?」と言われたが、その実感は無かった。NETで得る病状とはだいぶ違って、痛くも痒くもないし「疱疹」もない。ただただ、顔の右半分が真っ黒け。箪笥の奥からつばのある帽子を引っ張り出し、目深にかぶって出かけた。内心穏やかではなかったが、1週間ほどで元に戻った。

MDT耐震化記録:診断業務Go!(2013年5月29日)

いよいよ耐震診断に着手する。

通常なら準備万端整えて契約を待っていたというべきところだが、臨時総会や定期総会の様相からして、手放しで突っ込めないものがあった。

■耐震診断調査の準備

耐震診断の資料とするため、コンクリート強度や中性化などを知る必要がある。(以前行なった耐久性簡易判定の調査で概略は把握していたが、診断にはもっと精緻な資料を要する。)

調査項目としては、

①コンクリート圧縮強度試験

②コンクリート中性化試験

③ひび割れ等目視調査

④不同沈下測定

①と②のために、コンクリート躯体からコアを採取しなければならない。

耐震診断は、次の段階で行なう耐震補強設計の基礎となるが、この補強設計について補助金を申請するには公的機関の評価・判定を受けなければならない。そしてこの評定には、「コア採取の数」が、1棟ワンフロアあたり3箇所以上必要とされている。MDTは、構造的には4棟に分かれているが補助金の対象となるのは5階建て3棟で、つまりは合計45箇所以上のコアを採取しなければならない。

評定を必要とする建物の多くは行政等が保有する建物で、学校や施設などだから、コアを採取する場所には事欠かない。

ところが分譲マンションの場合、

・居住する状態で採取する際の騒音等について、周知しなければならない

・住戸の廊下側外壁で採取する事は憚られる

・採取後の処理は完璧には行なえず応急処置にならざるを得ないから、目立ちにくい位置を選定しなければならない。

と、多くのハードルがある。最も適切と考えられる場所を選定して、調査の概要を事前に居住者に周知しなければならない。

マンションの場合、共用廊下に面した躯体で目立ちにくい位置となると、まずPS・MBSに限定されてしまう。このスペースは、最近のマンションだと必要最低限の寸法で設定されているから、コアドリルのセットが非常に困難だし、仮にゆとりある寸法だと、住まい手の荷物の置き場と化して居る。

このマンションもご他聞に漏れず、多くは荷物が満載されていて、中にはラックを組んでクローク状態のお宅もある。結局調査会社と共に全住戸のPS・MBSをチェックして、荷物の移動が比較的容易と思える住戸をピックアップして、ご協力をお願いすることとした。

ただでさえ、耐震診断の意味を充分にご理解いただけていない中での騒音を伴なう調査だから、お釣がくるくらいに丁寧なご説明が必要ということになり、

・調査のお知らせを掲示板等に早くから掲示し、

・PS等を拝借しないお宅には、調査予定箇所を記したお知らせをポスティングし

・出入にご迷惑が生ずるお宅を含めて、詳細な調査内容を記した書面を用意して、管理員さんが一軒一軒廻ってくれることになった。

多くのマンションでの傾向だが、管理員さんはどこでもすこぶる評判が良い。真面目でにこやかでやさしげな管理員さんが廻ってくだされば、大きな軋轢は生じないだろうと期待する。

MDT耐震化記録:合意形成

耐震診断の中で、耐震改修の基本方針を検討しなければならない。

一次判定の段階で、アウトフレームという補強方針をご紹介し、アバウトとはいえ予算までご紹介した。つまり、次の次の改修設計段階でやるべきことの基本方針をご紹介したわけである。今後行なう耐震診断の結果報告では、改修設計の基本方針をご紹介することになる。勿論、管理組合のご意見やご要望も聞きながらのハナシだが。

これって、実際にはとてもキツイ話である。耐震診断を受注しただけなのに、耐震改修の基本計画にまで突っ込むのだから。

少数のクライアントと協議しながら進めるのであればこれも納得できるが、区分所有者と賃貸居住者をあわせれば100名超のクライアントが相手である。

診断までは、多分予定通りに進むだろう。診断期間は6~8月。結果報告会はスンナリ行けば9月だが、合意形成の進捗状況によっては、報告会を延ばさなければならないかも知れない。

■耐震改修合意形成助成制度

大阪市が、分譲マンション耐震改修のための合意形成を支援する補助制度を始めた。**

主な要件は、

・耐震診断によって、耐震性の不足が明らかであること

・補助事業を活用して耐震改修を検討する決議(普通決議)

・耐震改修を検討するための専門委員会(耐震改修検討組織)を設けていること

等で、検討組織の運営支援・区分所有者の意向調査等が助成対象となっている。

この行政が発行している要綱では少し判りづらいが、国交省「マンション耐震化マニュアル」と合わせると、

①区分所有者の現マンションに対する不満や改善ニーズ等の意向を的確に行なうための専門的支援

②耐震改修構想の検討

③建て替え構想の検討

④耐震改修と建て替えとの比較検討・評価・合意形成

に対する専門的支援を受けるために、専門家に委託する費用を助成する制度・・・と読める。

この行政の助成はしかし、1/3且つ50万円以下(2017年では60万円)と非常にショボイ。今年度(2013年度)からのスタートだから、どれ程のニーズがあるかも判っていないのかしら。

※現時点では、大阪市分譲マンション再生検討費助成制度と名を改めている。

MDT耐震化記録:テーマ(耐震診断・耐震補強)について

「耐震診断・耐震補強」というテーマで、前回を含めて4回書いている。これは「耐震診断・耐震補強」に関する各種のブーイングが頻繁に聞こえてくることが影響している。

管理組合は、区分所有者共同の利益・良好な住環境を確保する事を目的として、安全・安心確保のため腐心しておられ、これには頭が下がる。が、そこに、ある種の利権が潜んでいることに気付かず、多くの自治体等が用意している「補助」を恃みに、極めて軽い「ノリ」で耐震診断に乗り出してしまっている。

①前回述べたように、「旧耐震」の建物が現行基準を満足する可能性は極めて低く、

②補強したくても現実論として補強できない建物は、決して少なくない。

もし「耐震診断してみようか」というテーマが理事会等に上程されたら、それは「耐震補強するか建替えるか検討しよう」というテーマとほぼ同義だと捉えてほしい。

同時に「耐震補強できる可能性」について、専門家の意見を訊いてほしい。

MDT耐震化記録:耐震診断・耐震補強

少ししつこくなるが、耐震診断と耐震補強についてもぅ少し。

1981年(昭和56年)5月31日より前に建築確認を受けた建物の殆どは、いわゆる「旧耐震基準」で設計されている。個人住宅とか自社ビルなど所有者の意向が影響する建物だと、その時点での基準に関わらず安全率が加味されている場合もあるが、分譲建物の場合、構造コストが原価に影響するから、安全率は削ぎ落とされていることが多い。

今、耐震診断を受けてみようかと考えておられる方は、まず建物の「建築確認時期」(建築確認済証の交付年月日)をチェックしてみよう。ここで注意すべきは「完成時期」ではないこと。

新築時の建築確認図書が保管されておれば、その日付を確認する。たいがいは新築分譲時のパンフレットにも記載されている。もし倉庫をひっくり返しても見当たらない場合は、行政(ex大阪市・堺市等)の窓口でも調べることができる。繰り返すが、新築時の建築確認が、1981年(昭和56年)5月31日以前であれば、いわゆる「旧耐震」である。

この「旧耐震」の建物が、耐震診断⇒耐震補強の対象となる。

マンションが旧耐震の場合、行政が耐震診断を奨励している。区分所有者・居住者にとっても安全性を確認できるほうが良いから、「耐震診断してみよう!」という提案に異議が出ることは少ない。

しかし、ここで注意しなければならないのは、マンションを売ったり賃貸に出す場合。

「いわゆる旧耐震基準に基づいて建築された建物について一定の者が行なった耐震診断がある場合には、その内容を説明しなければならない」と、宅地建物取引業法施行規則に規定されている。耐震診断や耐震補強の有無は、重要事項説明項目に加えられたのである。

なぜこの問題を取り上げたのか。

「補助金」という行政の手厚い応援を背景に、気軽に耐震診断を受けるマンションが多い。近年では、管理会社が「診断しましょうよ」と営業しているらしい。それは良いことなのだけれど、旧耐震のマンションは診断すれば大概がNGとなる。その結果を見てから「耐震補強・・・どぉする?」と考えるのは、ちと違いますよ・・・と云う事。

勿論、耐震補強するかどぉかは、管理組合が判断しなければならないことで、必ずしも補強しなければならないという事ではない。建て替え検討も「有り」なのだから。

しかし、マンションを売ろうとか賃貸しようとする場合、補強するとも建替えるとも方針が定まらないまま、診断結果が「NG」だと仲介業者が告げれば、もしかすると面白くない結果になりかねない。

MDTでは、勿論、診断する前にこの議論があった。「耐震診断」をぐっと簡略にした「簡易診断」を行ない、その結果をご覧いただいた際、先に紹介した宅建業法の件もご紹介した。

「診断でNGだとして、耐震補強以外の方法は?」と訊かれたので、「建て替えかな?」とお答えした。

【おまけ】

マンション所有者には、投資目的の方もおられる。そんな方は「建て替えれば、今よりずっと立派な(大規模な)マンションになって、資産価値が上がるかも」と期待しておられる。

MDTでは、極めて簡単なものではあったが、建替えてどれほど居住面積(販売面積)が増えるかのシミュレーションをしてみた。

案の定、現状の居住面積を確保できるかどうか怪しい・・・という結果だった。尤も、地盤を大きく掘削して半地下住戸とかにすれば話は別だが。

実際、付近に新しく建ったマンションの多くが、半地下住戸があったり、容積率を満足できていなかったり・・・。大阪市内屈指の良好な環境にも関わらず、日照が少なく、湧水の恐怖と隣り合わせと云う住宅が、それでも投資に値するマンションと云えるだろうか。

MDT耐震化記録:定期総会(2013年5月25日)

 耐震診断が可決されたのは、4月の臨時総会。翌月の定期総会の開催案内には、理事長の手紙が添えられた。耐久性概略調査における一次判定(簡易判定)のあらまし、臨時総会の開催に到った経緯、そこでの質疑応答のほかに、行政の補助金申請が間に合ったこと、耐震改修に関する法改正の動きなどを紹介して、「旧耐震のまま何らの補強もしなければ、おのずと資産価値に影響し、スラム化を招く」という懸念まで記載されていた。

耐震診断は既に臨時総会で可決されたのだから、定期総会の議題に上がっていない。私たちに出番は無く、お呼びはかからなかったが、案の定、臨時総会のむしかえしになったそうだ。『このマンションは強いと思う』に始まって『補強なんか必要ない』『神戸の地震でも5階建ては潰れてない』とかなんとか・・・。

4月の臨時総会では、一次診断の結果を示して、バルコニーや共用廊下の方向にはとても弱いことをご説明したが、ご理解いただけていないのだろうか。・・・いぃや。前回書いたように、災害は自分を避けて通ってくれるとか、地震被害についてだけ「野中の一軒家」を決め込んでいるとか・・・。

耐久性簡易判定として、中性化試験などとともに耐震の一次判定を行なったが、これが裏目に出たのではないかと気になる。1月の臨時総会に耐震診断を提案しておれば、そして可決されておれば、どうだったのだろう・・・と。

しかし、耐震診断には相応の費用を要するし、「このマンションは大丈夫」と思って居る人達の気持に変わりは無いだろうから、もっともっと揉めただろう。費用の点からすれば、委任状提出で総会に欠席する人達を想定すれば、無為に「やってみないとわからない」という、数値も何も示さない状態で賛同を得る事は難しかったかもしれない。

健康診断を嫌がる人が居る。何を隠そう私もその一人だが、この歳まで生きてくると問題の無いはずがない・・・と、勝手に決めて、そんな診断を聞いてしまったら気にしてしまうから、だから健康診断から逃げている。タバコをやめろといわれるだろうし、運動しろと言われるだろうし、たまには休めとも言われるだろう。だから、逃げている。

別に私自身を正当化するわけではないが、耐震診断と健康診断は根本的に違う。健康診断で引っかかった項目を解消する方法は沢山あるだろうが、確実に健康を回復できるかというと、場合によりけりである。多くの場合日々の生活が制限されるし、好物を食べられなくなるかもしれない。下手をすれば、一種の禁欲生活が一生続く。

しかし耐震診断に基づいて改修すれば、工事の期間さえ我慢すれば、後は「安心」が待っている。勿論計画修繕が前提条件だが、今のままの生活を続けられるのだ。

臨時総会は、4時間に及んだそうだ。

私は、総会の出席経験はさほど多くは無いが、管理組合として熟成していない場合には、多くの参加者が途中で席を立つ。突然立ち上がったり、大声でわめいたり、テーブルに足を載せるなど行儀の悪い参加者が居たりもする。4時間という長丁場に耐えられるこの管理組合は、やはり真面目で真剣で・・・。

MDT耐震化記録:耐震改修は できるとは限らない

とても理不尽だとは思うが、耐震改修は「できるとは限らない」。

耐震改修できないマンションは、少なくは無い。

たとえば都心で敷地いっぱいに建つマンションの場合、外皮に補強できるだけの空地が無ければ、内部で補強するしかないが、果たして「住みながら」工事が可能かと考えると、大概はNGにしかならない。郊外地で、一定の空地があっても、工事中EVや階段や廊下が利用できなければ一時転居は避けられない。これらの費用は当然に、補強改修設計費や工事費とは別枠で用意しなければならず、実現可能性は極めて低くなってしまう。

バブル期の計画だと極端に無駄を排除している例が多い。同時にゆとりも排除しているわけで、そぉすると、構造計算では補強できても「レアリティが無い」ということにもなりかねない。建築関連法令を熟知した設計者が、ギリギリのトコロを狙って計画すれば、新築工事費は極めて合理的に節約出来、それが販売価格にも反映されて、購入者にとってはラッキーだった訳だが、数十年後にオツリが来る。

まことに切ない話だが、これが実態である。

補強可能かどぉかの判断は、経験豊かな構造専門家と経験豊かな意匠家が協働しなければ導けるものではない。

行政の補助を恃みに、安易に行なった改修補強計画は、まさしく絵に描いた餅以外の何物でもない。