自分のイメージだけを大切にする設計者

Gさんは、実家を建替えるにあたって建築家Hに設計監理を依頼しました。ホームページで作品を見て、とてもおしゃれで気に入ったのです。報酬は工事費の●%と言うことで、HPに書かれているとおりです。2人目の子供が妻のおなかにいるので、Gさんは急いで契約しました。

何度もHの事務所に通い、打ち合わせを重ねて設計が完了し、工事が始まりました。

妻の出産があって、好天の土曜日、しばらくぶりに完成直前の現場を覗くと、想像以上に素敵な佇まいです。おおいに気に入って、上機嫌で中に入りました。中庭に向いて、2階にも大きな窓があってとても明るく、妻は大喜びでした。でも「?」と思いました。2階の大きな窓を開けると、下は庭のデッキです。監督さんに「手摺まだなんですね」と言うと、「手摺は無いんです」と答えられてびっくりしました。「設計図に手摺がないので、H先生にどんな手摺にしましょうかってうかがったら、手摺はつけないと指示されたんですよ」とのこと。「先生のイメージに合わないんですかねぇ」とも。

これでは子供だけでなく、大人にとっても危険です。その場でH事務所に電話すると丁度建築家Hが居て、「手摺をつけたらイメージが壊れるんですよ。見ていただいた模型にも手摺は無かったでしょ」と言われました。模型に手摺があったのか無かったのかGさんは思い出せませんでしたので、「それでも小さな子供も居ることですし」と丁重に頼みました。するとHは「どうしても危険だと仰るのなら、窓をあかないようにしましょうか」と言います。横にいる妻にいうと、「窓が開かないと、風が通らないじゃないの。それにガラス掃除はどうするのよ」と言います。これにHは「プロのお掃除を頼めばいいじゃないですか」と答えました。

言葉を失ってしまったGさんは、「すみません、ちょっと考えさせてください」と電話を切り、「でもまぁ、手摺だけのことだし」と気を取り直して、も一度家のあちこちを見て廻りました。

玄関ドアは鉄製の枠に1枚ガラスという素敵なデザインで、でも透明ガラスなので道路から中が丸見えです。カーテンか何か工夫すればいいのだろと思ってふと足元を見ると、鍵が付いています。床の近くに鍵が付いているのです。へぇっと思ってドアを見回しても、他に鍵はありません。施錠した状態でハンドルを引こうとするとガタガタします。真ん中に鍵をつけて欲しいと監督さんに言うと、「タテガマチが細すぎて、ケースが入らないんですよ」と言います。Gさんには良くわかりませんでしたが、「どうしても無理なんですか?」と訊くと「メンツキ錠なら付けられるんですが、先生がOKなさるかどうか・・・」と言います。

奥行きの深いシステムキッチンの向こうに出窓があります。普通の引き違いではなく「すべり出し窓」と言うのだそうで、窓辺がすっきりして綺麗です。でも、妻には開閉することが出来ません。手が届かないのです。監督さんに「開閉はどうするんですか」と訊くと、「オペレータを付ければいいんですが、今からだと露出になりますんで、先生がOKなさらないんじゃ・・・」と言います。

家に帰って、気になったところをメモにしてH事務所にメールしました。

翌週のHからの返信にはこう書かれていました。「お申出の趣旨を生かすと、私のイメージからは大きく外れたものになります。変更されるのはご自由ですが、竣工写真撮影完了までお待ちください。なお、追加工事費用は▲万円で、これに私どもの報酬●%を加え■万円必要ですので念のため申し添えます。」

追加工事に設計監理報酬を請求することは、設計事務所にとってなかなか高いハードルであります。しかも、自分は了承できないからやるんだったら勝手にせぃ!と言いながらきっちり請求するなんて、同業として見習わなければいけませんね・・・なぁんて、んな事ないでしょ!

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