新米の設計スタッフと新米の現場監督

前面道路が緩やかに傾斜している郊外地。3階建ての1階には駐車場があって、その奥に玄関。少しデザインを感じさせるAさんの住宅です。

傾斜道路の低い位置から駐車場に入るようになっているのですが、家相を気にする両親の意見で決めた配置ですし、設計事務所に設計を依頼し地元のしっかりした工務店に施工して貰ったので、水はけは問題ない様にしてくれているとタカをくくっていました。

引っ越してしばらくして大雨が降りました。2階の窓から見たら、前の道路を雨がサラサラと流れています。朝食を終えて出勤しようとしたとき、Aさんはアレッ?と思いました。玄関の床が濡れているのです。吹き降りの雨が入ったのかなと思ってドアを開けたら、ポーチには水溜りがありました。沓摺の外に、ひたひたと水が迫っています。駐車場とポーチにはレベル差はなく、ポーチと玄関には沓摺分の段差しかありませんから、道路を流れた雨が駐車場からポーチに流入したのです。道路には側溝もありますが、大雨を収容しきれなかったのでしょう。

工務店に電話したらすぐに駆けつけてきて、「土嚢を積みましょうか?」と言ってくれたのですが、その頃には小降りになっていましたので断りました。でも「これからもこんなことが続くんだったら困るなぁ」と言うと、若い監督Bが「設計の先生に言うたんですけど、まったく問題ないって言わはったんですよ」と言います。

Aさんは思い出しました。設計事務所に設計は依頼したのですが、予算の関係と地元工務店の施工だということで、監理は頼んでいなかったのです。でも、着工前後には工務店をきちんと指導してくれたと聞いていましたし、金融公庫の中間検査にも立ち会ってくれました。さすがにボス先生は地鎮祭に来てくれただけでしたが、若いスタッフを充ててくれていましたから、安心していたのです。この駐車場水浸し状態を予見できなかったのでしょうか?

結論から言うと、工務店が現場に乗り込んで最初に行なったレベル測量の問題でした。
設計事務所は、道路勾配がさほど大きくもなく宅地はフラットでしたから、レベル測量をしていませんでした。それで、現場監督がFAXしてきたレベル測量メモに基づいて、スタッフがGLポイントを電話で指示したのです。

Point1:スタッフは、一度も現場に来ることなく図面を作成していました。図面には宅地レベルを設計GLとして記載するのみで、道路や隣地の事は表現されていません。つまりこのスタッフは、緩やかな傾斜地であることを知らなかったのです。

Point2:現場監督は、測量結果を早く知らせようと、現場で作成したメモをそのままFAXしていました。道路の高い位置は1,200、低い位置は1,500、宅地は1,400という具合です。
スタッフは、実は新卒の入社早々で、レベル測量結果の見方を知りませんでした。数値の大きいほうを高く小さいほうを低く、つまり標高と同じように解釈していたのです。それで高低差を、真逆に判断したのです。そして現場監督は、設計事務所の指示だからと異論を唱えず、また会社に相談することもしませんでした。

これは工務店と設計事務所の少なくともどちらかが若手をサポートできていれば、回避できた問題です。後日、双方の協力で、宅地内の雨水排水処理を大幅に改善したと聞きました。設計事務所の法的責任がどうなのかは意見が分かれるところでしょう

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